日本ワインコンクール実行委員会は7月30日(火)、「Japan Wine Competiton(日本ワインコンクール)2019」の審査結果を公表しました。
25道府県107ワイナリーから788点(前回24道府県104ワイナリー787点)が出品され、82ワイナリー351点が受賞。金賞21点(前回22)、銀賞82点(88)、銅賞210点(189)、奨励賞38点(29)となりました。
主な受賞ワインは表のとおりです。
やっぱり猛暑の影響なのかも
欧州系品種・赤ではシラー100%が初めて部門最高賞を受賞しています。甲州では山梨県以外で初めて島根のワイナリーが金賞を受賞。島根県のワイナリーが金賞・部門最高賞を受賞したのも今回が初めてということです。2018年といえば本気の記録的猛暑でしたから、ワインにも大きく影響が出たんじゃないでしょうか。
個人的には、「極甘口」「ロゼ」「スパークリングワイン」あたりで金賞が1つもなかったのも驚きでした。やっぱり猛暑のせいなのかも。「極甘口」はカテゴリーがなかった第1回で2つきりの金賞のうちの一つが「グランポレール北海道余市貴腐1994」だった時から必ず金賞があったように思っていたのですが、第5回(07年)、第8回(10年)、第16回(18年)が金賞なしなので、今回は4度目にして2連続の金賞なしでした。
「ロゼ」は金が出ない時の方がまだ多いですね。「スパークリングワイン」は第7回(09年)以来連続で金が出てるかと思ったら、第10回(12年)に金なしがありましたので、連続金は再び中断。「品質は高いが、突出したものが見られなかった」と評されていました。
中小の躍進が目立つ?日本ワインが全体レベルアップ??
なお、金だけ見てもそうですが、大手酒類会社以外の受賞がかなり目立つんじゃないかと感じました。中小ワイナリーの底上げによって全体的な水準が上がっている感じがしました。銀・銅・奨励賞を見ればさらにその印象が強くなります。でも大手に頑張ってもらわなければ広くワインが広がる可能性はほぼ無くなるわけで、大手ももっと頑張れ&中小も頑張れ、と思います。何よりもっと飲まなくちゃね。
公式の講評は
後藤奈美審査委員長(酒類総合研究所理事長)の金賞受賞部門の講評を録音で聞くことができましたので以下に抜粋しました。長いので、お好きな方だけ見てみてください。
【甲州】
金賞はいずれも樽を使わないワインから選ばれている。最高賞のワインは甲州の持つフルーティさと豊かな味わいを特徴とするバランスの良いワインだった。他も甲州が持つポテンシャルがよく発揮され、トップノート、口中感、後味で一貫した方向性が感じられるワインで、甲州ワインの次元が一つ上がったと評価された。外国人審査員のマスター・オブ・ワイン協会元会長のリン・シェリフ氏は「オークを使用していないものの中に、スタイル的にとても良いものがあった。一方、オークを使用したものの中には、樽の使い過ぎが目立ったので注意していただきたい。またTCAによるコルク臭が散見されたので、甲州はスクリューキャップに変えた方が良いのではないか」とコメントしています。
金賞はいずれも樽を使わないワインから選ばれている。最高賞のワインは甲州の持つフルーティさと豊かな味わいを特徴とするバランスの良いワインだった。他も甲州が持つポテンシャルがよく発揮され、トップノート、口中感、後味で一貫した方向性が感じられるワインで、甲州ワインの次元が一つ上がったと評価された。外国人審査員のマスター・オブ・ワイン協会元会長のリン・シェリフ氏は「オークを使用していないものの中に、スタイル的にとても良いものがあった。一方、オークを使用したものの中には、樽の使い過ぎが目立ったので注意していただきたい。またTCAによるコルク臭が散見されたので、甲州はスクリューキャップに変えた方が良いのではないか」とコメントしています。
【欧州系・白】
17・18年のワインが中心。全体的にレベルが高いものが多く、特に18年は猛暑だったものの品質の高いものが多く見られ、全体のレベルアップがうかがえた。部門最高賞のソーヴィニヨン・ブランはサンセールのようなエレガントな香りがあり、爽やかな酸味とともに口中のバランスがとれたワイン路と評価された。金賞のシャルドネ4点はいずれもクリーンな樽づかいで、果実の特徴のバランスのとれた品質の高いワインだった。同じシャルドネでもクラシックなもの、モダンなもの、冷涼なクリマ、温暖なクリマまでの多様性が感じられ、このカテゴリの今後のさらなる向上が期待される。英ワインジャーナリストのモンティ・ワルディン氏は「想像していたよりとてもよかった。ほとんどのワインが良い重量感があった。高温多湿な気候では樽の衛生管理が重要となるが、樽は概ねよく管理されており、ほとんどのワインはとてもクリーンだった。個人的にはケルナーがとても可能性が高く楽しめるワインが作られていたと感じた。またアルバリーニョはフレッシュで塩レモンのような風味の辛口ワインで大いに可能性を感じた。いい意味で驚かされた。この取組みを続けてほしい」とコメントしました。
【国内改良・赤】
金賞5点はいずれもマスカット・ベーリーA。最多の87点の出品があり、オークを使用したものが多かったが、オークの有無に関わらず全体にレベルがかなり上がり素晴らしいワインが増えた。特に2017年が良かった。オークを使っていないものはフレッシュで原料の良さが感じ取れるものが多くあった。また凝縮感を狙った出品が増えているが、「エレガントさが重要」との意見があった。豪ワインジャーナリストのデニス・ギャスティン氏は「マスカット・ベーリーAが単一、もしくはブレンドとして部門の多くを占めているのは非常に重要。品質は全体に良好だったが、昨年ほどではないと感じた。これは醸造技術というよりも最近の困難な気候条件を反映してると考えられる。その為、質感やフレーバーを高めるため高い補糖量や濃縮、オークに頼った出品ワインの数が増えているようだが、最良のマスカット・ベーリーAは清潔な発酵、穏やかなプレス、また適度なオークによる熟成によって得られると感じている。またこれ以外では幅広い品種の特性を示しており、なかでもロンドは最高のワインのひとつであったと感じる。またヤマソーヴィニヨンのなかにも良いものがあり、マスカット・ベーリーAとブラッククイーンのブレンドもとても良いと感じた」と評しています。
【欧州系・赤】
シラー100%の部門最高賞受賞は今回が初めて。クリーンで豊かな果実香とシラー特有のスパイスの香り、また熟した滑らかなタンニンと全体の香味の特徴が取れ心地よいワインになっている。さらに良い熟成が期待され、日本のシラーの可能性を感じさせると評価された。プティ・ヴェルドは口中のストラクチャーがしっかりしたワイン。メルロはいずれも品種特性が良く表れているのに加え、クリーンで赤や黒い果実の芳醇なアロマと風味に、樽の熟成由来のバニラの適度なニュアンスがあり、香味の調和がとれていると評価された。カベルネ・ソーヴィニヨンはブレンドが多く出品された。ピノ・ノワールは上位に来るものが少なかった。昨年に引き続きシラー、カベルネフラン、ツバイゲルトレーベにに品種特性のあるアロマが豊かで今後の可能性を期待させるワインが出品された。ボルドー大ワイン教育部長のジル・ド・ルベル氏は「この部門のワインは15年間で大きく改善されてきたが、高品質ワインを造るためのぶどう栽培にはよりいっそうの努力が望まれる。ぶどう果実の最良の熟度、最良品種やテロワールの選定などが重要。消費者に大きな喜びをもたらし、一層の感動を与えるようなワインになるよう、醸造所の努力によりタンニンの質やワインのバランスの大きな改善が望まれる」と話したそうです。
※受賞リストの表が、PCだと文字が見えない部分があるのでこちらに改訂版を掲載しました。
よろしければ参照してください。
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