お酒じゃないけどノンアルコールじゃない、アルコール1%未満のビールテイスト炭酸飲料、”微アルコール”のジャンル名で話題となっています。アサヒビール「ビアリー」(3月30日発売、6月29日全国展開)の独擅場でしたが、サッポロビールが9月14に「サッポロ The DRAFTY」(ザ・ドラフティ)で参入することになり、さらに盛り上がりそうです。

微アルビアリー1


 新しい(と言っても1%未満は以前からあるのですが)商品カテゴリだけに勘違いされているところもあるようです。まずはその辺から明確にしていきたいと思います。


微アルコールとは

 微アルコールビールテイスト炭酸飲料とは、酒税法で定める「酒類」(アルコール分1度以上の飲料(飲用に供し得る程度まで水等を混和してそのアルコール分を薄めて1度以上の飲料とすることができるものや水等で溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含みます。)に含まれないもので、20年ほど前には「ノンアルコールビール」と言われていたものです。詳細は以前の記事で書いた(【飲んでみた】帰ってきた“微アル”!ビールっぽい味「ビアリー」)ので詳細は省くとして、アルコール0.00%のノンアルじゃないけど1%以上の「酒類」ではないものです。アサヒビールさんが2021年3月に「ビアリー」を発売するタイミングで”再定義”したカテゴリーと言えます。

酒税がかかっているというのは誤解

 さきの項目で書いたように「微アルコール」は酒税法の「酒類」には当たらないので、品目には炭酸飲料と書いてありますし、当然ながら酒税はかかりません
 しかし、製法が「ビールを一度作り、それを脱アルコール処理する」というものなので、「いったんビールをつくるのだからビール同等の酒税(350mlあたりで70円、昨年10月に7円減税になっています)がかかっている」という誤解が一部にあるようです。
また、このカテゴリー一号商品の「ビアリー」がビールとほぼ同等の価格で販売されていることから早合点する人もいるようです。

 実際のところはというと、酒税は蔵出し税(製造場から出すときに課税される)なので、製造場内でビールをつくるだけでは課税されません。工場見学に行くと見ることができますが、製造場の外に伸びるパイプに水道メーターのように流量を計測する装置が付いていて、そこを通った瞬間に税金がかかる仕組みです。ここを通る前に脱アルして酒じゃなくなってしまったものは、酒税はかかっていません。
ちなみに工場内の試飲スペースで出されるビールもこのパイプを通った後のものなので、当然ながら課税されています。

安易に”微アル”というべからず

「微アルコール」ならばおそらく一般名称ということで問題ないと思われますが、「微アル」はアサヒビールが商標登録申請をしています。正確には「アサヒグループホールディングスが2020年8月6日申請の商願2020-098078」及び「同社が2021年1月20日申請の商願2021-005903」です。同じタイミングで「ビアリー」、少し遅れてスマートドリンキングの「スマドリ」についても出願・審査待ちです。つまりアサヒ製品以外で”微アル”と言ったり書いたりした場合はアサヒビールから商標権利を主張される可能性があるということです。

夏~秋の主役たち

微アルコールを代表すると言えば、第1号商品のアサヒビール「ビアリー」でしょう。
「ビアリー」100%ビール由来原料ならではの麦のうまみとコクを実現したアルコール度数0.5%のビールテイスト飲料。仕込工程で香り豊かでコク深いベースビールを醸造した後、脱アルコール工程でアルコール分をできるだけ取り除く製造方法を採用しています。今回のリニューアルでは、アルコール分を取り除く蒸留工程において温度や圧力などの条件を最適化し、ビール特有の香味を残すことでさらに本格的な味わいに仕上げたものです。
 2021年3月30日(火)から首都圏・関信越のエリア限定、6月29日(火)から全国展開。8月上旬には味覚リニューアル。9月14日(火)に334ml小瓶を発売するのは、コロナ禍で酒販売に制限を受けている飲食店で取扱いしやすくするためのものでしょう。
 また第二弾「ビアリー 香るクラフト」を6月29日(火)から首都圏・関信越エリア限定で先行発売。
 さらに9月28日(火)にはウイスキーハイボールでアルコール度数0.5%の「ハイボリー」、アル度数3%の「ハイボリー3%」を発売し、微アル・スマドリの商品層を手厚くしていきます。


サッポロドラフティ

 このカテゴリーに新規参入するのがサッポロビール「サッポロ The DRAFTY」。9月14日(火)から全国発売します。
麦芽100%生ビールを原料とすることで、ビール好きが納得するうまさの微アルコールビールテイストを実現。ビールテイストらしい自然な香り、麦の旨みを感じるスムースな味わいに仕上げています。
アルコール度数はちょっと高めの0.7%。コク感や飲みごたえを高める狙いがあると思われます。

この秋気になる価格設定

まだまだ始まったばかり、成長途上の「微アルコール」カテゴリーだけに、参入メーカーは大事に育てていきたいと思っているに違いありません。アサヒビールは発表会で、微アルコールの市場は一社でつくれるものではないので、参入するところがあれば喜んで一緒にやっていくという主旨の説明をしたそうです。狭い市場で喧嘩していてもしょうがないので協力して育てていこうという意識なんだと思います。
 
 ただ、さけにゅー的には「この価格で本当に共闘できるのか?」という疑問があります。というのも同じ「ビールからアルコールを抜いた微アルコール」なのに価格が違うからです。
350ml缶で「ビアリー」は希望小売181円(税抜)。「ザ・ドラフティ」はオープン価格(新ジャンルと同等程度、コンビニ価格とすると税抜で134円くらい?)。
酒税が加算されていない「ビアリー」がビール同等価格なのは脱アル前のビールが相当良いものということで納得できていましたが、同じくビールから脱アルしたのに”新ジャンル価格”の「ザ・ドラフティ」が横に並んだ時、購入する人がどう受け止めるか。さらにはアルコール度数が0.5%の方がお高めで0.7%の方が安いので、買う人の目にはどう映るのか気になります。

それで売れ行きが落ちたり、お店から値下げ交渉が頻繁に来たりすると、アサヒビールから見ると「価格破壊」と受け止めるんじゃないでしょうか。説明上の製法は同じで価格は安いとなれば、高い側からすればすでに「価格破壊」の第一歩です。販促キャンペーンで特売価格とかで始めると、空気はだいぶ不穏なものに変わってくるのではないか、と予想しています。
そして実際に売価が下がった場合、元に戻すのはほぼ無理です。むしろ下がる一方になることの方が多いです。特に「酒税」という、お上に必ず取られる枠がない分、下がるとブレーキが効きづらいのが問題です。0.00%が出る前の1%未満の「ノンアルコールビール」たち。最後の方は安い清涼飲料と並べて1缶68円くらいで売られていた記憶が蘇ります。
 そうならないよう、たとえばつくりの大変さとかの情報をもっと開示してくれると、値付けにも納得がいくんじゃないかなあと思います。せめて、ベースビールってどんなものか公開してくれないかなあ。


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