皆様はもうボジョレー・ヌーヴォー(BN)は飲まれましたでしょうか。店頭からはもう姿を消しているところも多いようで、“一週間で売り切るお祭りワイン”という意味では、今年はちょうどいい感じの商戦になったんではないでしょうか。
遅ればせながらですが、うちでも「ボジョレー・ヌーヴォー、飲んだよー!」ということで【飲んでみた】感想を書いておきます。いただいたのは「ジョルジュ・デュブッフ ボジョレー・ヴィラージュ ヌーヴォー セレクションプリュス2023」です。
色味はルビーやガーネット、澄んでいるけれども向こう側が見えるまでではない果実の凝縮した印象がありました。香りは華やか。バラやスミレのような艶のある香り、イチゴやラズベリーのような果実みがあり、味わいもフルーティー。パワフルというほどではなく、チャーミングほどでもない、しっかりと深みのある、甘み、渋味、酸味のバランスの取れた味わいとなめらかな口当たり。
まあ、ボジョレーのなかでもいいやつを飲んだからなのかもしれないけど。
今年のフランスの気候は暑かったり雨不足だったりしたところもあるはずだけど、そんな感じが全くない、落ち着いた良い収穫を迎えられたんだなぁというほっこりした印象でした。
今年のBN入荷量は、サントリーによると240万本くらいらしいですね。去年が192万本くらいのようだから、少しは良くなったみたいです。
ただ、去年はまだコロナで外飲みもおぼつかなかったし、比較対象とするにはイレギュラーすぎますね。ピークの2004年が1,440万本くらいなので、そこまではまだまだ足らないようです。
今年は価格も昨年よりは少し下がって買いやすくなったといいます。ただ、昨年は宇露戦争で航空運賃が跳ね上がったあおりでBNの価格も大幅上昇しているので、例年から比べるとそれほど下がったわけでもないでしょう。一時のBN安売り競争のころよりはだいぶ高いですが、変な安売りであまりおいしくないのを飲まされるよりはマシです。一方、ボジョレー地域のすぐ上のブルゴーニュだと価格は目ん玉飛び出るほどでそれはそれで望ましくないので、価格はこのくらいでいてほしいものです。
あんどれの思うところを書いてみた
先日、「マールボロはなぜ失墜したのか」という記事を読んだのですが、BNもこれに当てはまりそうで「こわっ」と思いました。1993年、世界有数のブランド力を誇る「マールボロ」が安いノーブランド品に対抗するために価格を大幅に引き下げたところ株価が大幅下落。“ブランドの死”とまで言われているということでした。
BNの場合は1985年に日本に上陸。当時は銀座の裏通りとかで細々とサンプリングとかやっていました。それが、本国フランスの人よりも、さらには大国アメリカよりも先に飲めるという優越感が「Japan as №1」(1979年発行)と言われた当時の日本人の自尊心を大いに刺激したんでしょうね。その勢いで祭りの規模はどんどん大きくなりました。はじめのうちは空港の保税倉庫で0時解禁だったので、羽田から六本木まで誰が早く運べるかというカーレースイベントまで行われていたらしいです(今では考えられませんが)。その後、物流倉庫で解禁、店内倉庫で解禁、店頭で飾りつけして解禁と徐々に売りやすくなり、消費のピークは2004年に1,440万本へと広がります。日本人がワインを飲むきっかけをつくるのにもすごく貢献していて、日本人のワイン消費量が一人当たり年間3本と言われたうちの1本はBNとも言われていました。
そこから下がっていった理由は、「飽きられた」とか「フランスでは安く飲まれている」とかいろいろ言われていますが、実は「安っぽくなってしまったから」じゃないかと思うんです。
下がっていく直前、当時2,000円強だったBN航空便がスーパーのPBで1,500円、1,200円、1,000円と年を追うごとにセンセーショナルな低価格化が行われていました。初めて手に取る、という効果はあるのかもしれませんが、これこそ“ブランドの凋落”だったんじゃないか。「フランス料理とか気取ったところじゃないと飲まない、ワインがそれほど高くない値段で、しかもお祭りなのであまり堅苦しくなく飲める。ちょっとだけリッチな感じ」が、いつしか、「毎年100年に一度とか言ってる、気取ってて気恥ずかしい、流行遅れ」なイメージになっていったように思います。
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